2013年 10月 04日
乳がんと生きる2:講演会・乳がん最新情報-ザンクトガレン2013(前編) |
インプットはさっさとアウトプットしないと忘れてしまうものだ。
「忘れる」といって思い出すのは、エビングハウスの忘却曲線である。ドイツの心理学者へルマン・エビングハウスは「記憶(記銘・保持・再生)」が時間経過によってどのように変化するのかを実験法を用いて忘却曲線という形で記述した。
その実験の結果では、時間経過によってどのくらいの記憶内容が失われるのかを計測してグラフ化している。縦軸に記憶率(忘却率)、横軸に時間を取ってグラフ化された曲線を、一般に「エビングハウスの忘却曲線」と呼んでいる。そして、それによれば、1週間後(7日間後)には77%を忘却していたとされている。つまり、先日のセミナーは7割以上忘れてるってことなのかもしれない(完全忘却と再認可能な忘却とは違うので、本来、この話に当てはめるのは正しくない)。
前置きが長くなったが、何が言いたいのかと言えば、まとめようと思っているセミナー内容は、実は77%を忘れてしまったことなのかもしれないということなのだが、実際のところは原文とセミナーでいただいた資料があるので、そんなこたーないってことで(オヨヨ)。
治療方針の変化
というわけで、先日参加した「講演会・乳がん最新情報-ザンクトガレン2013」のまとめをしてみる。
先にもちょっと書いたけど、当日はかなり混みあっていており、このザンクトガレン コンセンサスに対し、乳がん患者の方々がどれだけ注目しているのかということがわかる。基本的にこのコンセンサスは、「早期乳がんの初期治療」の指針となるものである。
以前に行ったセミナーがあまりにもどうかな~?という内容だったので、今回はいかに?と思っていたのだが、非常に内容は充実していた。おそらく、ある程度ザンクトガレン コンセンサスで提示されている内容に親しみがないと、理解しずらかったのではないかと思うが、それを知っていらっしゃる方であれば、かなり満足されたのではないかと思っている。
講演後の質疑応答も濃い内容が多く、集まっている方たちの注目の高さをひしひしと感じた。
ザンクトガレン コンセンサスは現在、2年に1度行われており、そのたびにコンセンサスとして提示される推奨治療方針は多かれ少なかれ変更されることが多い。変更の度合は、その回によって異なるものの、過去にすでに初期治療を終えた患者さんから見れば、自分が行った治療ががらりと変わってしまうということもありうるのだ。もちろん、これはザンクトガレン コンセンサスだからというわけではなくて、どのような病気であっても、医療の進歩により、治療方針は変更されるものだろう。
これまでの乳がんの治療においても、たとえば手術はハルステッド術から乳房温存術へと変化している。また、HER2タンパクが過剰出現していたタイプの乳がんには、初期治療における術後の補助療法に分子標的療法としてトラスツズマブ(ハーセプチン)が使われることで予後が改善されるなど、基本的にはよりよい方向への変更が行われているといえそうだ(その一方で、この変更により、過去に行った治療について落胆したり、後悔したりする患者さんもいるということも忘れてはならないのだが)。
そして、このコンセンサスが新しくなる2年の間に発症した患者は、次のコンセンサスが提示される前に初期治療がすでに終わっている場合、コンセンサスとコンセンサスの間で見つかったよりよい方向の治療が受けられなかったかもしれないという、ドラッグラグならぬ、コンセンサスラグのようなこともあったのかもしれない。
しかし、今回のコンセンサスでホットだった内容はちょっと趣が違う。初期治療の期間というのは、乳がんのタイプにもよるが、短い場合は数か月~1年程度、長い場合は5年と、タイプによってかなり異なる。これまでのコンセンサスでは、「どのような治療を行うか」という、スタートラインにおけるチョイスという点の話が多かったように思えるので、先ほどのコンセンサスラグのようなことが起こりうるのではないかと考えていた。だが、今回のコンセンサスでは、通常は5年という長い期間をかけて治療を行うタイプに当てはまる乳がんの治療期間を、さらに5年間延長するかどうかという、非常に長い線に関する話が議題に上がったことにより、今までとは違った方向性を見せていた。つまり、次のコンセンサスが提示される時、今の治療を受けている患者がまだ治療期間にあった場合、よりよい方向へ変更されることの恩恵を受けられるかもしれないのだ。
というわけで、講演会の内容でかなりホットであったのは、主に現在は5年間の治療を要する、ホルモン陽性乳がんの補助療法に関してだった。大きく分けると次の2つだ。
・ホルモン陽性型乳がんに抗がん剤を使うかどうかをどう識別するか?
・ホルモン陽性型乳がんでタモキシフェンにより内分泌療法(ホルモン療法)を行っている患者のうち、5年ではなく10年間行うのが望ましいのはどんなグループなのか?
ちょっと疲れたので、今日はこのあたりで。
次回は上記のくわしい内容と、その他の話題についてまとめてみる。
「忘れる」といって思い出すのは、エビングハウスの忘却曲線である。ドイツの心理学者へルマン・エビングハウスは「記憶(記銘・保持・再生)」が時間経過によってどのように変化するのかを実験法を用いて忘却曲線という形で記述した。
その実験の結果では、時間経過によってどのくらいの記憶内容が失われるのかを計測してグラフ化している。縦軸に記憶率(忘却率)、横軸に時間を取ってグラフ化された曲線を、一般に「エビングハウスの忘却曲線」と呼んでいる。そして、それによれば、1週間後(7日間後)には77%を忘却していたとされている。つまり、先日のセミナーは7割以上忘れてるってことなのかもしれない(完全忘却と再認可能な忘却とは違うので、本来、この話に当てはめるのは正しくない)。
前置きが長くなったが、何が言いたいのかと言えば、まとめようと思っているセミナー内容は、実は77%を忘れてしまったことなのかもしれないということなのだが、実際のところは原文とセミナーでいただいた資料があるので、そんなこたーないってことで(オヨヨ)。
治療方針の変化
というわけで、先日参加した「講演会・乳がん最新情報-ザンクトガレン2013」のまとめをしてみる。
先にもちょっと書いたけど、当日はかなり混みあっていており、このザンクトガレン コンセンサスに対し、乳がん患者の方々がどれだけ注目しているのかということがわかる。基本的にこのコンセンサスは、「早期乳がんの初期治療」の指針となるものである。
以前に行ったセミナーがあまりにもどうかな~?という内容だったので、今回はいかに?と思っていたのだが、非常に内容は充実していた。おそらく、ある程度ザンクトガレン コンセンサスで提示されている内容に親しみがないと、理解しずらかったのではないかと思うが、それを知っていらっしゃる方であれば、かなり満足されたのではないかと思っている。
講演後の質疑応答も濃い内容が多く、集まっている方たちの注目の高さをひしひしと感じた。
ザンクトガレン コンセンサスは現在、2年に1度行われており、そのたびにコンセンサスとして提示される推奨治療方針は多かれ少なかれ変更されることが多い。変更の度合は、その回によって異なるものの、過去にすでに初期治療を終えた患者さんから見れば、自分が行った治療ががらりと変わってしまうということもありうるのだ。もちろん、これはザンクトガレン コンセンサスだからというわけではなくて、どのような病気であっても、医療の進歩により、治療方針は変更されるものだろう。
これまでの乳がんの治療においても、たとえば手術はハルステッド術から乳房温存術へと変化している。また、HER2タンパクが過剰出現していたタイプの乳がんには、初期治療における術後の補助療法に分子標的療法としてトラスツズマブ(ハーセプチン)が使われることで予後が改善されるなど、基本的にはよりよい方向への変更が行われているといえそうだ(その一方で、この変更により、過去に行った治療について落胆したり、後悔したりする患者さんもいるということも忘れてはならないのだが)。
そして、このコンセンサスが新しくなる2年の間に発症した患者は、次のコンセンサスが提示される前に初期治療がすでに終わっている場合、コンセンサスとコンセンサスの間で見つかったよりよい方向の治療が受けられなかったかもしれないという、ドラッグラグならぬ、コンセンサスラグのようなこともあったのかもしれない。
しかし、今回のコンセンサスでホットだった内容はちょっと趣が違う。初期治療の期間というのは、乳がんのタイプにもよるが、短い場合は数か月~1年程度、長い場合は5年と、タイプによってかなり異なる。これまでのコンセンサスでは、「どのような治療を行うか」という、スタートラインにおけるチョイスという点の話が多かったように思えるので、先ほどのコンセンサスラグのようなことが起こりうるのではないかと考えていた。だが、今回のコンセンサスでは、通常は5年という長い期間をかけて治療を行うタイプに当てはまる乳がんの治療期間を、さらに5年間延長するかどうかという、非常に長い線に関する話が議題に上がったことにより、今までとは違った方向性を見せていた。つまり、次のコンセンサスが提示される時、今の治療を受けている患者がまだ治療期間にあった場合、よりよい方向へ変更されることの恩恵を受けられるかもしれないのだ。
というわけで、講演会の内容でかなりホットであったのは、主に現在は5年間の治療を要する、ホルモン陽性乳がんの補助療法に関してだった。大きく分けると次の2つだ。
・ホルモン陽性型乳がんに抗がん剤を使うかどうかをどう識別するか?
・ホルモン陽性型乳がんでタモキシフェンにより内分泌療法(ホルモン療法)を行っている患者のうち、5年ではなく10年間行うのが望ましいのはどんなグループなのか?
ちょっと疲れたので、今日はこのあたりで。
次回は上記のくわしい内容と、その他の話題についてまとめてみる。
by sunday_tourist
| 2013-10-04 20:30
| イベントやセミナーなど