2013年 12月 30日
乳がんと生きる3:講演会・乳がん最新情報-ザンクトガレン2013(後編) |
すーっかり日も経ってしまっているのですが、9月の終わりに参加した、ザンクトガレン コンセンサス2013に関する講演会の続きです(前回はこちら)。前回と文体が変わっているんですが(だ、である調から、です、ます調に)、私が文体を変えることにあまり意味はなくて、なんとなく、です。本当は、だ、である調の方がこういう話はいいのかもしれませんが、とりあえず、私はそもそも適当なので、許してください(笑)。
別に以下の2つだけという話ではもちろん無かったのですが、恐らく、以下の2つの内容というのが、かなり注目を集めているんではないかという勝手な私の想像でして(というか、自分に関係することだからってことですけど)、それ以外の話は、コンセンサス原文の要約という感じだったので、興味がある方は原文をチェックされるのもよいかと思います(いつの間にか最新版にアップデートされてたので、そちらにリンクを張り直しました)。大体は、こちらとこちらを見ていただくと、なんとなーく概要みたいなものはつかめるかもしれないです。
- ホルモン陽性型乳がんに抗がん剤を使うかどうかをどう識別するか?
- ホルモン陽性型乳がんでタモキシフェンにより内分泌療法(ホルモン療法)を行っている患者のうち、5年ではなく10年間行うのが望ましいのはどんなグループなのか?
ホルモン陽性型乳がんに抗がん剤を使うかどうかをどう識別するか?
これに関しては、Oncotype DXやMammaPrintに代表される、Multi-gene signature assay(多重遺伝子分析)が有用だとする報告が、この2年間で増しているようで、その中でもOncotype DXはLuminalタイプ(AとBどちらも、ということだと思います)での抗がん剤併用の必要性を予測できるとしており、MammaPrintでの低リスク群(Good Progonosis)では、抗がん剤を用いなくても、良好な5年間の成績が得られたという報告があったとのことです。
これまで、臨床で使われているMulti-gene signature assayには、Oncotype DXとMammaPrintがありましたが、それに加えて、PAM50(パムフィフティって読むのかな……)という、増殖関連に重点を置いた50個の遺伝子に腫瘍径を加味して、Instrinsic Subtyesに分類するかつ、Risk of reccurence score(再発リスクスコア、ROR)を算出するという予後判定キットが登場したようで、これを使うと、サブタイプ分類+再発リスクスコア(ROR)がわかるようです。Prosignaという商品名で登場し、今年9月にFDA(Food and Drug Association)の米国医療機材発売許可書を取得したようです。つまり、現在は3種類のMulti-gene signature assayが臨床で使われているということになります。Prosignaに関しては、最近、これを使った臨床試験の結果がいくつか出てきており、どうやら内分泌(ホルモン)療法を5年ではなく、10年行うのが望ましいとされるグループの特定に使えるかもしれない感じですね。これに関しては、ちょっと前に行われた、サンアントニオ乳癌シンポジウム2013で発表されていたようでした。
ホルモン陽性型乳がんでタモキシフェンにより内分泌療法(ホルモン療法)を行っている患者のうち、5年ではなく10年間行うのが望ましいのはどんなグループなのか?
これに関しては、現在はまだ特定されていないようです。ただ、ちょっとお伺いした方の中には、閉経前で、すでに10年の投与が決まっている方もいらっしゃいましたので、何かしらの基準はあるのかもしれません。現在分かっていることは、ATLAS Trialと呼ばれる、タモキシフェン5年投与と10年投与を比較した臨床試験の結果において、「10年投与は5年投与に比べて乳がん死を3%減らし、子宮内膜がん死などを0.2%増加させる」という結果のみのようです。
というわけで、まだもやもやっとした感じではあるのですが、恐らく、2年後に上記の2つに関しては、ある程度の答えが出るのではないかと思います。現状でも、多重遺伝子診断はそれなりに臨床で使われているようですので、今後はさらにその使用が加速されるのではないでしょうか(しかし、値段が……)。
その他に気になった内容など
ここでちょっと書いていた、タモキシフェン(などのSERM)にOFSとしてLH-RHアゴニストを追加する必要があるのか、という話も出ていたのですが、どうやら現在SOFT Trialという臨床試験が走っていて、そろそろ最初の結果が出そうな感じなので、個人的にはこの結果を見て治療を考えようかな〜という感じです。この試験では、タモキシフェン5年と、OFS+タモキシフェン5年、OFS+エキセメスタン5年を比較しているというもので、OFSは、Triptorein(トリプトレリン)、卵巣摘出、卵巣放射線照射が挙げられています。ちなみに、トリプトレリンというのは、欧米で使われているLH-RHアゴニストのようです(初めて聞いた!)。
今回のサブタイプ分類を表にすると以下のとおり。呼び名に「-like」と付いたのと、PgRの値以外は前回の2011とほとんど変わっていないです。
Ki-67とPgRのカットポイントについては、いろと議論があるようですが、表に書かれたメモによると、Ki-67は14%以下、PgRは20%以上が提案されているようです。
というわけで、すっかり遅くなってしまったのですが、講演会のまとめでした。
講演会自体は、前に書いたとおり、会場いっぱいに人がいらしていたので、注目度の高さをひしひしと感じました。内容としては、自分で理解していたことを補足するという意味でも、とても役に立ちました。
これを持って、ザンクトガレン コンセンサス2013に関する記事はひとまず終了としたいと思います。
by sunday_tourist
| 2013-12-30 02:43
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